夢現物語
見せてみろ、と貴久が言うので、鈴鹿はそれを手放した。
元々、葵、という御名に、覚えはなかった。
(おかしい。この手蹟(て)は、藤一条の君のものだ。なのに、差出人は、葵になっている。何故か?)
藤一条の姫君と葵の姫君は同一人物なので、お手蹟が似ているのは、当たり前である。
「此方は、沙夜が葵様に差し出された文です。『桜、若草の姫君が、其方の姫君、葵様を馬鹿にしてらして。葵様は、桜様達の姉君ですのに、桜様達は知られていないのですよ。おかしな話で御座います。』ですって。」
他でもなく、桜は貴久の姉上である。
その姉君、となれば、それまた貴久の姉君となられる。
(間違いない。藤一条の君と、「葵様」の手蹟は、同じ様に思う。)
元々、葵、という御名に、覚えはなかった。
(おかしい。この手蹟(て)は、藤一条の君のものだ。なのに、差出人は、葵になっている。何故か?)
藤一条の姫君と葵の姫君は同一人物なので、お手蹟が似ているのは、当たり前である。
「此方は、沙夜が葵様に差し出された文です。『桜、若草の姫君が、其方の姫君、葵様を馬鹿にしてらして。葵様は、桜様達の姉君ですのに、桜様達は知られていないのですよ。おかしな話で御座います。』ですって。」
他でもなく、桜は貴久の姉上である。
その姉君、となれば、それまた貴久の姉君となられる。
(間違いない。藤一条の君と、「葵様」の手蹟は、同じ様に思う。)