夢現物語
桜と、若君を御覧になると、御心が、この上無く傷ついて、いや、全く、生きている心地がなさらないらしい。
同じ父君を持っていながら、片や姫君、片や女房と、身分がこれ程にも上下してしまうのは、仕方が無いことなのであろうか。
そして、「完全な人間では無い」我が身故に降り積もる不幸に、何も言えず、ただ、運命の随に流されていくのか、と思われていて、この頃、御落涙なさることも多くなった。
紅い瞳。
それだけで、忌み嫌われる己が御身を悔やまれていた。
天女で有りながら、流される様にこの憂世に降りられ、結ばれた藤の方。
また、天女で有りながら、卑しい女に仕わされる藤一条、葵の姫君。
似ているように見える二方の御人生だが、何処か違う。
同じ父君を持っていながら、片や姫君、片や女房と、身分がこれ程にも上下してしまうのは、仕方が無いことなのであろうか。
そして、「完全な人間では無い」我が身故に降り積もる不幸に、何も言えず、ただ、運命の随に流されていくのか、と思われていて、この頃、御落涙なさることも多くなった。
紅い瞳。
それだけで、忌み嫌われる己が御身を悔やまれていた。
天女で有りながら、流される様にこの憂世に降りられ、結ばれた藤の方。
また、天女で有りながら、卑しい女に仕わされる藤一条、葵の姫君。
似ているように見える二方の御人生だが、何処か違う。