夢現物語
「世の中を 憂しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば」

-こんな世の中、嫌なものだ、消え入りたい、と思うけれど、さて飛び去ることも私は出来ないのよ。鳥ではないので。

そんな意味の、万葉の歌である。
人間は鳥のように、自由さを持たない、故に、どれ程に辛くてもこの地で生きてゆかねばならぬのだ。

この現し世は、憂い事が多いが故に、憂世と呼ばれるのだ。


(どうしようか、僕は、姉を愛してしまったんだ………異母姉弟だから、許されぬ、禁忌ではあらぬが………母上は、どう思われるだろうか。それとも、藤一条の姫君、が僕等の姉君、「葵の姫君」であるのを、御存知であろうか。)
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