夢現物語
「え?」

顔見知りの、お付き女房が声をかけてきた。

「物思いでもなさっていて?ほら、お顔に現れていらっしゃいましたわよ?」

教養の無いわりには、良く見抜いた、と思うことが出来なかった。
身の破滅の恋、であるがため。

「あの………さ、逢鈴を呼んで来てくれないか?」

「逢鈴………ですか?」

「そう、逢鈴。頼むよ………」

女房はにやにやと気味が悪い笑を浮かべながら、すたすたと歩いていった。
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