夢現物語
和泉は姫君のお為、と物語をお読み申した。

「あ。」

ポロポロと涙が頬をつたって、流れて来る。
姫君は、泣かれた。

「姫様、お泣き遊ばしないで……………」

あぁ、と声をお上げになり、悲しいかな。どんなに泣けど、藤の上はお戻りにならない。
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