夢現物語
「こんな幸せが、一生、続けば良いのに。この宵が、永遠に、続けば良いのに。」

そう呟かれて、貴久は、藤一条、葵の姫君が寄りかかっていらっしゃるのを見届けられてから、そのまま、座った状態のまま、お休みになった。


「北の方様。」

翌朝、貴久が、姫君の曹司からお帰りになった後のことであった。

桜付きの若女房が、あろ事か、告げ口しに参ったのである。

「若君を、朝早くにお見かけしました。如何なさったのかと思い、暫し拝見していましたら、女房の曹司から出てこられたのです。」

ほう、と北の方は関心があるような、ないような相槌をうつ。
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