夢現物語
琵琶を抱かれる力が増し、姫君は、几帳の裏に隠れられた。

「藤一条!」

女房が叫びながら曹司に侵入して、下々に、調度品を持って行くように申し付けていた。

「何を!」

女房が藤一条の姫君の前に置いてあった几帳を奪おうとするので、姫君は慌てて、それを掴まれた。

(何?聞いていないわ。藤一条が、こんなに剛力だったなんて。)

女房が気を緩めた一瞬のスキをついて、姫君は几帳を奪い取り、その反動で、女房は転げ、「きゃ」と声をあげた。

片腕に琵琶を抱かれ、ひしとそれを守る様に、また、もう一方で几帳を抑えていた。
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