夢現物語
(あ。)
気が、遠く、何処へ行ってしまう気がなさった。
しかし、それも遅く、姫君は琵琶をきつく抱き締めたまま、気を失われた。
「北の方様、御命令通り、藤一条の曹司から、調度品諸々、盗って………いや、「お借り致しました」わ。ただ、本人が琵琶を抱き締めて離さないので、それだけは、「お借り」出来ませんでしたわ。」
女房は強い口調で申し上げた。
借りた、と言うのは、やはり、盗ったと言うと体面が悪く、自分が悪人な様な気がするからである。
女房は姫君がお召になっていた美しい袿やら単衣を抱えていた。
北の方は、それを、自分の物として良いと言うのだ。
気が、遠く、何処へ行ってしまう気がなさった。
しかし、それも遅く、姫君は琵琶をきつく抱き締めたまま、気を失われた。
「北の方様、御命令通り、藤一条の曹司から、調度品諸々、盗って………いや、「お借り致しました」わ。ただ、本人が琵琶を抱き締めて離さないので、それだけは、「お借り」出来ませんでしたわ。」
女房は強い口調で申し上げた。
借りた、と言うのは、やはり、盗ったと言うと体面が悪く、自分が悪人な様な気がするからである。
女房は姫君がお召になっていた美しい袿やら単衣を抱えていた。
北の方は、それを、自分の物として良いと言うのだ。