夢現物語
北の方はその姫君のお応えにとても立腹し、懐から何かを取り出した。

(短刀…………私が、死ぬはずだった。あの。)

それは短刀で、あの貴久をお隠れさせた物である。

(何を、する気?私なら、ほうって置いたら勝手に死ぬわ。だって、首をそれで、刺したのだもの。)

北の方が近づいてくるので、じりじりと後ろに下がろうとなさったが、袴が長いもので、速く動くことは出来ない。

(?)

姫君は、北の方の視線が何処に当たっているか、それを察された。それは、御髪だった。
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