夢現物語
(何をしようと………)

下がられていたものの、遂に壁にぶつかってしまわれた。

(しまった!)

すぐさま横に逃げようとなさったが、北の方が袿の裾を踏みつけたので、身動きがとれなくなって仕舞われた。

北の方は、姫君の御髪をつかんだ。
あからさまに、切る、というのを表していて。

「北の方!」

やめて欲しかったので、そう、仰ったつもりであった。
北の方は、まるで般若の様な顔をしている。
傍目には、既に初老に入ったばかりの女が、短刀を持っている。それは、おかしく見えた。
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