夢現物語
「私の…………髪が……………」

髢を作ろうにも、切られた御髪を持ち去られたのではそれさえ出来ない。

-墨染。
墨染も短い髪も尼君の物である。
また、短い髪の毛を、尼削とも言うのだ。

(私に、出家しろ、とでも、言うの?この、私に?仏教を知らなかった、天の地に住まうはずの、私に………)


姫君は、北の方によって、すぐに一条邸にお移りすることとなった。
一条邸は、姫君の藤一条、の名の元になった、父君の別邸である。

和泉、逢鈴は姫君について行くことを懇願したが、取り下げられた。

藤一条の姫君改、藤一条、葵の尼君は、墨染を纏われて、邸をあとになさる。
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