夢現物語
(あぁ、暇だ事。)

尼君(姫君)は尼君とは言え、名前だけであり、また、何もしていない、言わば暇な時間が多いのだ。

(そうだ。)

徒然なるままに………
尼君は嘗て、本邸で噂され、評判になった、かの物語を書こうとなさった。

(あ。)

筆を持たれた手を、止めて、ポロポロと涙を流された。

忘れていたこと。
それを、思い出されたのだ。

(貴久を恋しく想ったのは、他でもない、逢ったことがあったからなのね。そう……………)
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