夢現物語
片方が、お隠れ遊ばしたのに、恋い焦がれ、貴方を待っている、なんておかしな話であろうか。


昔、尼君が姫君であり、また、一条邸に住まわれていた頃。

誰か、出自は知らぬが、姫君と等しく、優れて美しい少年がたまに遊びに来ていた。

名前は詳しくは名乗りはしなかったが、彼が住まう邸が三条だったため、三条と呼ばれていた。

その三条と言われた美しい少年が、後の貴久であられる。

姫君も貴久も同母兄弟姉妹がおられなかったので、寂しく思われていたが、父君の計らいで、たまに互いに遊び相手をしていた。
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