夢現物語
「貴方のお父様の北の方に?でも、異母弟を預かるなんて、気前の良い北の方ね。普通、許さないと思うわ、私なら。」

姫君がそう心配なさって仰ると、ううん、と首を振られて、「大丈夫」と応えられた。

「北の方、がね、僕の母様の姉君だったんだって。だから、母様が亡くなった僕のことを哀れと思ってくれたよ。」

そう、と姫君は突っ伏してしまわれた。
遊び相手が、また、一人、本邸に行ってしまった。

「父様、一条にお別れを言いたいんですけれど…………」

本邸へ行く前、貴久は父君にそう、願われた。
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