夢現物語
「一条は、寝込んでしまったのだよ。余程悲しかったのだろう。行ってやるが、挨拶は口頭で、なるべくはやく………こんなことは言いたくなかったが、北の方がはやく、と急かしておるのだ。」

父君は、車で、もう一度、最後と思われ、貴久を一条邸に連れていかれた。

「一条!」

貴久は、邸に上がり込み、止める女房も無視し、対の屋に向かった。

「三条?三条なの?」

姫君は夜具の中からお顔を出され、貴久を御覧になった。

「最後だから、と思って、僕、来たよ。」

急いで来られたのか、はあはあと肩で息をなさっていた。
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