夢現物語
(私は、知らず知らずのうちに、貴久嘗ての三条に恋をしていたのだわ。本邸でまた会って、それで思い出したのね…………叶わなかった初恋を。)

本邸で再会されたとき、二人の御身分は変わっておられた。

片や若君、片や女房。

そして、二人は、姉弟だった。
異母姉弟だと言え、それを知ってしまわれたからには、すぐに昔の恋心を思い出すことは、とても難しく思われた。

「いつへの方に 我が恋やまむ」

万葉の古歌の一部を呟かれた。

(もう一度、逢えないのね、願っても。そして、私は、きっと、このまま忘れられて、捨てられて。)
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