夢現物語
全くもって、此の邸の女房は、教養の無い者が多い。
桜も若草も、それに影響されてしまっている。

「何でも、瞳の真紅な女だったらしいよ。美しいって言っても、それはないと思うわ。気持ちが悪い。」

「人間じゃ、なかったのではないの?ほら、赫夜姫だって人では無かったわけだし。」

「そうかしら。」

不幸中の幸い、姫君については、何の噂もたってはいなかった。
しかし、この様な娘に笑いものにされた藤の上は、何と哀れな方か。

誰も聞いては居ないと思っていたのだが、それを、こっそり聞いていた女童がいた。
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