夢現物語
(え?)

恐る恐る振り返って、御覧になると、背後にいらした亡霊は貴久だった。

「貴方、今、私のことを、一条と呼びました?貴久………いえ、三条。」

貴久が尼君を一条、と呼ばれたので、尼君もそれに合わせて、三条とお呼びになった。

「三条、貴方は隠れた(死んだ)のよ、何故、此処に居るの。見つかったら、追い出されてしまうわ。」

キョロキョロと周りを見渡されたが、この邸は人少なで、尼君以外はいらっしゃらないので、ほっと、安堵なさる。

「一条、会いたかったよ………憶えている?葵を、添えた文を渡したの。貴女の名前だったんだね、知らなかったんだ、そのときは。」
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