夢現物語
少し経って。
本邸に、尼君がおかしくなられたと噂がたった。

尼君第一の女房、和泉はそれを否定しているが、第二の女房、逢鈴はうんともすんとも言わない。

「一条に住まう、この邸縁の尼君(藤一条)は昔は情ある方で、教養もおありだったのに、変ね。おかしいわ。毎夜毎夜と亡霊が通って来ている噂なのよ。」

事の発端は、尼君が本邸をお出になり、一条邸に籠られた後、父君がせめてもと贈り物をする為、女房を遣わせたことである。

その女房というのが、少しばかり霊が見える娘であったらしく、尼君に霊が憑いてることに気がついたのだ。

女房はそれを怖がって、贈り物だけを置いて、すぐに逃げてしまった。
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