夢現物語
(私が若君を姫様にお近づけしたからだわ。あぁ、なんてこと。若君はまだ、姫様に御執着なさっているのだわ…………それを、怨霊憑きだなんて。若君、私、お恨み申し上げますわ。私の姫様をこんな目にあわせて!)

几帳を強く握りしめていたので、ある瞬間、余計に力んでしまい、几帳の布は音を立てて破れてしまった。

桜の乳母がそれに気が付き、睨みつけてきたので、慌てて「失礼致しました」と去ってしまった。

(私が、姫様の代わりになれれば、良いのに…………)

自分の頭を覆う、長く多い髪の毛。
それが鬱陶しくてならない。

(いっそ、私も、尼に………)

そう思ったが、逢鈴はまだ、世を捨てるのははやすぎる。
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