夢現物語
逢鈴は文を書いて、北の方ではなく、父君に許しを貰った。
父君は尼君を心配なさっているからである。

翌日、逢鈴は文使いも出さず、自分の足で一条邸に向かった。

「藤一条の尼君様、いらっしゃいませんか、逢鈴で御座います、あやしゅう御座いませぬよ。」

邸に上がり、御簾の前でそう言うと、内からふっと声が聞こえた。

「そう、逢鈴なのね。いいわ、お入りなさい。」

失礼致します、と逢鈴は理ってから御簾を潜った。

「尼君様………」
< 159 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop