夢現物語
逢鈴、涙ながらに髢を渡して来た和泉を思い浮かべた。
「姫様………いいえ、今の尼君様に、渡してね………私は、どうなったって良いの。尼君様の幸せは、私の幸せよ。尼君様が幸せにおなりなら、私はそれで、幸せだわ。」
和泉は、それから、美しい色鮮やかな装束を全く着ないようになった。若い女房達は、そこまでして忠誠を誓う和泉の心理など、分かりはしなかった。
結局、一番可愛いのは、自分、ということであろう。
「尼君様は、御不幸ね。お好きであられた方(貴久)は、もうお隠れになっていらっしゃいますもの。今、あの方は、何をお望みになっていられるのでしょう。叶えられるものなら、私が叶えて差し上げたいわ。着いていけなかった、せめてものお詫びに………」
「姫様………いいえ、今の尼君様に、渡してね………私は、どうなったって良いの。尼君様の幸せは、私の幸せよ。尼君様が幸せにおなりなら、私はそれで、幸せだわ。」
和泉は、それから、美しい色鮮やかな装束を全く着ないようになった。若い女房達は、そこまでして忠誠を誓う和泉の心理など、分かりはしなかった。
結局、一番可愛いのは、自分、ということであろう。
「尼君様は、御不幸ね。お好きであられた方(貴久)は、もうお隠れになっていらっしゃいますもの。今、あの方は、何をお望みになっていられるのでしょう。叶えられるものなら、私が叶えて差し上げたいわ。着いていけなかった、せめてものお詫びに………」