夢現物語
『沙夜どの。
文を有難う。
私には、妹が二人いたのね。知らなかったわ。
私の母を悪く言うなんて、けしからん姫ね。
どの話を聞いていても、教養が無いのは直ぐに分かりました。』

姫君は態々御自分で筆を執り、文をお書きになる。

『私の存在は、誰にも知られていない様子ですの?
それは、願ったり叶ったり、と言えば宜しいかしら。

世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし

かしらね。』

この文を読んだ沙夜は、「さりげなく古歌を取り入れるだなんて、素敵ですわ」とうっとりしていた。
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