夢現物語
「月に叢雲花に嵐………」
そう呟いておられた藤一条の尼君。
何でも、邪魔な物の喩えであるらしい。
「扇も、邪魔な物の一つで御座いますね。ですが、美しい顔を隠すのも、華麗に魅せる一つの手、ですのよね。」
扇を手で持て余されて、開いたり閉じたりなさっていたのを、女房のいくらかは、艶めかしいと思っていた。
(藤一条の扇の方がいいわ、彼処の方が細工が凝っていて美しいもの。)
隠していた妬みの様な感情も、湧き出てきた。
(お父様たら、藤一条ばかり大切になさって。娘の私は、何処へ行ったのよ!)
そう呟いておられた藤一条の尼君。
何でも、邪魔な物の喩えであるらしい。
「扇も、邪魔な物の一つで御座いますね。ですが、美しい顔を隠すのも、華麗に魅せる一つの手、ですのよね。」
扇を手で持て余されて、開いたり閉じたりなさっていたのを、女房のいくらかは、艶めかしいと思っていた。
(藤一条の扇の方がいいわ、彼処の方が細工が凝っていて美しいもの。)
隠していた妬みの様な感情も、湧き出てきた。
(お父様たら、藤一条ばかり大切になさって。娘の私は、何処へ行ったのよ!)