夢現物語
御簾から、相手の顔はそこそこ見えた。

が、それは女では無かった、どうやら、兄の招待客の一人と思われる少年であった。

「誰ぞ…………」

驚いていたせいか、声が掠れてしまっていた。

「桜の君は、何処でいらっしゃいますか。女房殿。」

少し、低い声の少年で、桜を探していた様子であった。

「桜は、私。私ですわ。御兄様の招待客の方でいらっしゃいますでしょうか、迷われたのですね。」

御簾越しなので、顔を見ても、そうバレないのが良い、と思った。
< 173 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop