夢現物語
「そうでしたの………人に褒められるというのは、良い気が致しますわ。」

桜が思わず笑いながらそう言うと、途端に、ビュッと風が吹いてきて、二人の間にあった御簾がめくれてしまった。

「あ。」

御簾は大きく風に靡いて、桜の顔あたりまで上がっていった。

「桜の君………?」

桜は余りにも驚いていた為に、扇で顔を隠すのも忘れて立ち竦んでいた。

「ひゃっ!」

やっと、数秒後に気がついたのか、扇でバッと顔を覆ってしまった。

「桜の君。」
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