夢現物語
少年は袖を掴んで、静かに、諭すが如く言う。

「お隠しになられるな。美しさが、竦んでしまわれますよ。」

その歯が浮く様な台詞に、カッと顔を赤くした。勿論、怒っている訳ではない。

(まぁまぁまぁ!こんな方も世の中にはいらっしゃいますのね。)

照れ隠しに黙秘していた。
暫くしてから、その沈黙は破られた。

さらさらと衣擦れの音がする。どうやら、女房が伺いに参ったらしい。

「大変ですわ、私の女房が此処に参る様です。衣擦れの音が致しましたもの。貴方も、此処にいらっしゃっては、後々名が惜しくなられるかもしれませぬよ。」
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