夢現物語
古歌の意味は、「此の世に桜が無ければ良いのに。それなら、咲いたり散ったりするのを見ず、心穏やかにいられるのにね。」

実は沙夜は姫君に桜と若草のことを知らせていた。

つまり、この古歌を用いた本当の理由は別にある。

「我が妹、桜の姫が居なければ良いのに。それならば、私の心は穏やかでいられるのに。」

妹が桜と呼ばれているのに掛けているのだった。

「この文は、秘密になさい。まぁ、教養が無いならば、分かるわけが無いけれど、女房のうちの一人位は、分かるかもしれませんから。」

姫君の方が桜、若草両方の姫よりも教養がお有りなのは明らかである。
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