夢現物語
(私を…………哀れと思う?母様の方が不幸でいらっしゃった筈よ?なんせ、貴女は天から降りて来られたのだから。それに比べれば、私等、取るに足りないわ。)

夢の中とは言え、やはり、母君に再び会われるのは、とても嬉しきことであられた。

『三条の邸におった貴久、という者が生き返れば宜しいのに、貴女はそう、言いましたわね、葵。』

先程、独りで思い悩まれていたことは、母君には御見通しであるらしい。

(いいえ、良いのです。それは、道理に反することですわ。只、貴久が隠れ、悲しんだ者も多いでしょうと、私とは違って………そう、思っただけですわ。)
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