夢現物語
桜は、文字だけが上手い。
しかし、歌はさほど上手くなく、率直なものしか詠めない。
まさに、宝の持ち腐れと言うのは、こういった者であろう。

(葛に聞いても良いけど、何故そんなことを、と問われたら、元も子もないじゃないの。藤一条の方が格調がある歌が詠めそうだけど、恋歌は無理そうよね、あれは堅物だし。)

物語の歌をそのまま贈っても良いには良いのだが、あまり自分の気持ちが伝わらない様な気がしてしまう。

女房達は歌等、詠むこともあるが、拙い物が多いし、恋と聞くと、きゃあきゃあと騒ぎ立てて、五月蝿い。

「恋なんて、残酷でしょう。捨てられるのが嫌ならば、人を愛さず愛されず。それが、一番良いのでは御座いませんか。」
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