夢現物語
「どうかなさいましたの?」

「いや………何でもない………よ。」

忍は着替えるのを手伝う女房に、自分の秘めた心を見抜かれまいと緊張ぎみだ。

「お顔が真っ赤でいらっしゃいますよ。何事も無い、と言うわけではありませんね。そのご様子では。如何なさいましたか?御役所で何かあったのです?」

女房は詮索して来るので、ううっと言葉に詰まってしまった。

「へ、へまをやらかした訳ではないよ。それだったら、進退窮まって、父君に相談するさ。」

「では、何でしょうか。美しい姫君を垣間見た、とか?真っ赤でしたし。」
< 197 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop