夢現物語
桜と忍の巡る運命の歯車に横槍を入れるが如く、邪魔をする者がいた。

常磐という姫である。
常磐は桜に比べれば教養もあり、猫かぶりなところもあるが、上品な姫君に見える。

だが、不幸なことに、桜よりも家格の低い家の生まれで、叶わぬ恋で終わるはずだった。

「姫様。筝の手習いをいたしませんと。」

「私は………筝は弾けないもの。」

「姉君様は名手でいらっしゃるので、弾き比べになるかも知れませんよ。いつか。」

常磐は、筝はあまり弾けない。せいぜい、桜よりはまだまし、人に聞かせるのもぼちぼち、という腕前である。
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