夢現物語
姫君がお住まいの別邸はますます寂しくなる。

「世の中は 空しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり」

意味は、「此の世の中は、仮のもので空しいものだと知ったときは、いよいよますます悲しみがつのることよ。」

万葉集に載っている古歌である。
世の中の空しさを詠ったものだ。

「姫様。また、悲しい事をお言いになりますな。」

和泉は姫君の身の回りの片付けをしながら、呟いた。

「だけれど、この間、また女房が辞めたでしょう。このままでは、皆、辞めてしまうわ。」

本邸の方が給金が高く、待遇も宜しいので、そちらに行く者が増えた。
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