夢現物語
そう、つまり、常磐は道に迷うてしまっていた。

三条邸とは、常磐の住んでいる邸である。貴久のお住みだった三条邸とは場所は違うが、同じ三条にある。紛らわしいが。

カランカランと車輪が回る音がして、瑠莉は常磐に「姫様………」と声をかけた。

「車が、来ます。」

そう言われた時には後ろに、小さめの網代車が向かってきていた。

(そうだわ。)

常磐は驚きを隠せない瑠莉を放っておいて、網代車の前に立ち塞がる。

「従者殿。お止まり遊ばせよ。」
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