夢現物語
女房が言っていたが、常磐の典侍が、出仕している忍に恋文を贈ったとか。

それを聞いた女房達は、「まぁ、女から?大胆な御方ね」と言っていたが、此方からしたら、それどころではない。

(典侍に、忍君を盗られてしまう。)

常磐の典侍の噂は聞いていた。

ほんの少し前、出仕し始めた姫君で、桜の実家よりは家格低い家だった。

桜は右大将の姫君。
常磐は中納言の姫君。

だが、典侍自身が才色兼備で、どんな楽器も弾け、見目美しい、そんな人だった。

身分以外に、桜は常磐に勝っていないのだ。

(きっと、お母様のことだわ。縁談、そろそろ持ってきそう。)
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