夢現物語
「忍…………君………………?」

逢いたかった、ずっと、逢いたかった人の声がした。

「お久しぶりです、桜の君様!」

(逢え………た…………、これは、夢なの?幻?私が目を覚ましたら、全てを、消えてしまうの………?)

桜はよろよろと床から出て、忍の前に掛かっている御簾までやって来た。

「忍君、まあ、これは、夢なの?それとも、現実かしら、どちらなの?」

桜は、嬉しくて嬉しくて、堪らなかった。喩え、夢でも構わないと思った。

「現実ですよ、こっそり、邸を抜け出して来たのです。」

「本当に…………?」
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