夢現物語
『父君。
此頃、如何御過ごしかと存じます。

私の住まう邸が人少なになっているのは、ご存知でしょうか。

このままでは、この邸には誰も居なくなってしまいます。

是非、其方の女房や女童を二、三人ずつお借り出来ませんでしょうか。

母君の行方が掴めず、はや、どれ程経つのでしょうか。

世の中は 空しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり

といったところでしょうか。

本妻の娘ではない、卑しい私が申すのも、おかしな話だと思いますが。

葵』
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