夢現物語
弱々しく、それであって、喜びに満ちた声。

「忍君………よかった、よかった、また、逢えました。」

桜は、泣いていた。
ボロボロと、流した涙が、頬をつたって、床にシミをつくっていた。

「誰も、いませんね。」

「えぇ、だって、もう、遅いもの。誰も起きていないわ。でなくては、貴方、此処まで来れなかったでしょう?」

「そうですね。」

「でも、如何して?如何して、こんな遅くに、来られましたの?危険ですのに。」

理由は知りたかったが、夢が覚めてしまいそうだった。
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