夢現物語
「来てほしいから、来い、来い、と言っていたんだわ、きっと。……………私は、そう、思うの。」

雲の隙間から盛れ出る月明かりに照らされた桜は、美しかった。

「夜桜は、美しいですね。」

夜桜。
単純に、桜のことを指す。

(それって、私のこと?)

最近、少しづつだが、姫君らしい知識を得た桜は、なんとなく、それ察した。

「行きましょう。」

「え?」

「行きましょう、桜の君様。車を外に用意しています。今なら、この邸から、出られます。」
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