夢現物語
門番の目に、狩衣姿の少年と、袿一枚掛けた、娘が走ってくる。

「そこ、止まれ!」

門番が叫んだため、二人は足を止めてしまった。

「狼藉者!其方等、誰ぞ!」

(まずいわ、想定してたのかしら、忍君は。うちの門番に、見つかるだなんて!)

「そち、問うておるのだ!誰ぞ!名を名乗れぃ!」

門番は、忍を問い詰めていたが、ふと、桜に目がいった。

(女房にしては、良い衣裳だな。まさか、邸の姫君が?年格好も、確かに、一番上の桜の君様にそっくりだ。)

「そちら、桜の君様ではないか。」
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