夢現物語
そう言われて、桜は動揺してしまった。それに、門番は気がついた。

「そち!この御方が、右大将家の姫君と知っての狼藉か!」

門番は、忍を無理に追い出し、他の番に頼んで、邸に連れ戻させた。

「忍君!其方!忍君に何をするの!」

「桜の君様………!」

「いけませんな、姫様。これ以上、この者を追うならば、父君様に申して、あの者を然るべき処分をして頂きますぞ!それがお嫌ならば、戻られた!」

(そんな……………やっと、幸せになれたと思ったのに。)

「貴方がいないのに、如何して月は輝いているの?辛くなるだけなのに。」

そうなるのは、嫌だ。
だから、走った。
初めて走ったのに、実に軽やかに走れた。
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