夢現物語
目頭が、熱い。
今にも泣いてしまいそう。

「其方達の狼藉を見逃す代わりに、少しだけ、この方と話させて。少しでいいわ。私は、この方と一緒にはなれない。だけれど、これくらいは許される。そうよね?」

従者は黙認したのか、少し遠ざかっていった。

「忍君。」

忍の肩が震えた。動揺してしまっているらしい。仕方が無い。追っ手が遂に来てしまったのだから。

「ごめんなさい。私の考えが甘かったのだわ。決して、貴方のせいではありません。どうか、お気を病まないで。」

「君様!貴女のせいだけではありません。連れ去ろうとしたのは、此方です。此方にも非があります。独りで責任を背負い込まないで下さい。」
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