夢現物語
暫くして、この文を受け取った父君は、たいそう悲しまれた。

特に、最後のあたり、「卑しい私」と、卑下している。

「世が世なら、桜や若草達よりも身分高い姫君であるのに。世の中は、いや、哀れなことよ。」

身分卑しいのは、桜、若草姉妹である。
本来、葵の母君は、この俗世、浮世にいてはならなかった。

「空しきものと……………か。」

父君は涙ぐまれた。
我が娘の行く末をご心配なさっておられた。

教養の無い二人の姫を御自分で育てるのも、辛いことであられた。

父君は教養あり、風流な方であったので、言うことすること、全く解さない娘達に、失望されていた。
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