夢現物語
桜は首を振った。

「私達は、生きている間は結ばれない。悲しい話ですけれど。…………私、もうすぐしたら、きっと、入内させられる。分かりきっているの。上流の姫として生まれたからには、運命の様なものですわ。」

「桜の君…………」

「それでも、私は、貴方だけを心に誓い、生きて参ります。この世で結ばれずとも、来世があります。」

「……でも。」

「扇を交換しましたでしょう。あれを頼りに。きっと、何年かかろうと、貴方を探し続けるでしょう。」

「君様!きっと、来世でも!貴女を探します!きっと!」

従者が時を告げ、今度こそ、車に詰められた。
< 230 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop