夢現物語
藤一条の姫君の継母(知られていない)である北の方は、藤の花が好きで、常に咲いていればいいのに、と漏らしていた。

(小賢しいあの藤一条もこの名を持つのか。はあ、嫌だこと。いっそ、改名させてしまおうかしら?)

自分でも、それが良いと思い、早速和泉に言伝した。

「名を、変える?今更?」

姫君はキョトンとなさっていた。北の方が、姫君のことを、父君の娘と半ば見破っていたのだ。

(困ったわね………藤をとると、一条か。だけれど、この邸、地名をとっておる女房が多いからなぁ。)

考え込まれたのだが、良い案が思いつかれなかった様で、溜め息をおつきになる。
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