夢現物語
「和泉………お前、確か和泉から来たから、和泉と名乗っておるのよね。」

「はい。」

「こういう時って、父親の官職名を用いるのが一般的よね。私は無理だけれど。」

「そうですわね……あ、橘一条でしたら、如何ですか?」

名案と一瞬思われたが、姫君はあることに気が付かれた。

「和泉。それでは、父君の娘だと………この邸の一の姫だとばれてしまう。一条は、一娘とかけられるのよ。」

八方塞がり。まさに、こういう事を言うのではないか。

「父君に相談してみるわ。困ったことになりそうよ。」
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