夢現物語
(葵はやはり、殿の娘であったか。前から疑っていたとおりじゃ。いや、気分は悪いし、憎いが私の勝ちよ。)

北の方は、不気味な笑みを浮かべていた。


貴久は、独り、褥でお休みになっていた。

(何か、大切な人を忘れてしまっているのではないか。僕は。)

御本人曰く、「何かが足りない気がするのだが、それが何なのかが、よく思い出せない。だが、とても大切なものだったのは、よく覚えている」らしい。

そして、御首に残っている、傷。
これは昔、姫君が毒を盛られ、お倒れになった際、自害した為に残った傷である。
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