夢現物語
やはり此方の姫君も、独り悲しいかな、お休みでおられた。

(もし、貴久が記憶を取り戻してしまったら、次は私。私の記憶が失くなるのよ。)

それを考えられると、涙が流れて、雰囲気も湿っぽくなれてしまう。

(如何してなの?私。何故、弟を愛してしまうの?わかっている筈よ?これは、いけないって。だからこそ、貴久。貴方を生き返させ、代わりに、記憶を消し、私を忘れさせて、元通りにするつもりだったのよ。)


「誰ぞ………」

夢の中か、それとも、現なのか。
姫君は、お分かりになれなかった。
此方は誰何したのに、彼処は返さない。
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