夢現物語
「誰か、いらっしゃるのですか?」

霧で、前が全く見えない。
そして、音も静かで、聞こえない。

貴久は今、御自分が何をなさっているか、分からないままに、前に進まれた。

姫君も同様で。

何か、分からぬものが、分からぬ影が近寄った。
御二人はそれぞれ、そう思われた。

(あ。)

何かが、触れた。
手に、触れた、気がした。

このまま、霧が晴れれば、何があるのか分かるのに、と感じられた。

(誰?)
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