夢現物語
貴久は、それを聞き、顔を顰め、寝返りをうつようにして此方を向かれる。

「十十分かっておる。先、女房が申し上げておった。」

「なら、早く、お支度を致しませ。」

「あー、もう、分かった、分かったよ。従者は待たせておけ。すぐに行くから。ほら、支度して!僕も行く!」

貴久は袿を羽織って、そのまますたすたと歩いていかれた。

「若君!お待たせ致しました!」

逢鈴がお召し物を抱えて、裾を翻して走って来た。

「逢鈴、そんなに走って、大丈………」

「きゃあ!」
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